ウンコ色の日々

らいふ・いず・しっと

人間失格

 最近、読もう読もうと…ずっと思っていた『苦役列車』にようやく手をだしてみた。読み終わった後、なんでもっと早く読まなかったんだ!!!と後悔したほど面白かった。過大評価かかもしれないが…

 勢いそのままに西村氏の著書『二度はゆけぬ町の地図』『痴者の食卓』『やまいだれの歌』『暗渠の宿』の4冊を続けて読んでみた。

 優劣の差はあれど、遅読の自分でもサクサクと読み終えてしまうほど夢中になった。独特な硬い文体で書き起こされる自堕落な生活、暴言、暴力、妄想、理想、失望、絶望、諦観…どの作品も""負の感情””をこれでもか!と爆発させている内容である。しかし、どこかユーモラスさを感じられ、暗く陰鬱で胸糞悪い内容のはずなのに笑いを呼び起こす不思議さがあった。読んでる間、噴出したりバカ笑いすることがあるほど。

 うん!面白かった!っと本を閉じ、しばらく余韻に浸っていると、今の自分と作品に登場する主人公…どっちがクズなんだとふっと思い始める… 

 作品の主人公=昔の作者は日雇いを転々とし、金が尽きたら借金や親から恫喝まがいな形で金を巻き上げる。家賃を滞納し追い出されを繰り返す。友人や恋人に数多の暴言と暴力を繰り返し、耐えかねず去っていく。自身の振る舞いが災いし、職場から追放されることも多くない。

 だが、早々と独り立ちし、フリーターじみた生活ながらも働いてるじゃないか。女性を恋人にできるほどの根性とコミュ力もある。困り果てた先のあてを見つけられる。苦汁と辛酸を舐めて、泥水を啜りながらもめげずに独り逞しく生きているではないか。

 一方、自分は何だ。精神がおかしくなったにせよ、友人が出来なかったから、人に嫌われたから、周囲と雰囲気が合わないから、勉強についていけないから、論文が書けなかったから…と勤め人が聞いたら一蹴して唾を吐きたくなる理由で大学を辞め、挫けて数年も引きこもる無様な男が例の主人公を一様に見下しバカ笑いできるだろうか。老いた親に寄生するケジラミのような生活を懲りもせずに続けるこのウンコ製造機と一緒にしていいわけがない。

 と、悶々と思い詰め憂鬱になってしまった。それと同時に、次はどの西村作品を読もうかとうかうかしているクソカスがここいる…。